こんにちは、Noahです。
私が過去に描いていた絵や、特にYouTubeで公開している動画には「ゼンタングル」というタイトルやタグが付いたものが多いのですが、私自身はゼンタングルを描くアーティストではありません。
とある時期を境に、「アーティストとしてやっていきたいなら、自分はゼンタングルはやらない方が良い」と考えるようになりました。
今では日本で楽しむ人も多いゼンタングルですが、私にとってはあまり嬉しい出来事ではありませんでした。
何故かというと、このゼンタングルの一般化の流れは私自身の絵のスタイルを変えざるを得ない状況になったからです。
今回は、アートの一般化がもたらすメリットとデメリットについてまとめてみたいと思います。
Contents
ゼンタングルとカテゴライズされた自分の絵

少し話は昔にさかのぼります。
私が25歳でニュージーランドから帰国して絵を本格的に描き始めた頃は、今では比較的認知度の高い「Zentangle(ゼンタングル)」というアートは日本にはまだ定着していませんでした。
そもそも、私が海外のアートを検索していた時に偶然見つけた自分の絵(Pinterestでシェアされていた)「Zentangle」というタグが付けられているのを見て、初めて「自分の絵はZentangleというジャンルの絵らしい」という事に気が付いたのですが、その当時カタカナで「ゼンタングル」とGoogleで検索しても日本語では1件もヒットしませんでした。
それ以降、自分の絵にゼンタングルというタグをつけて絵をアップロードするようになったのですが、しばらくしてゼンタングルはアメリカで商標登録されていることに気が付きます。
私は元々ゼンタングルをやりたくて絵を描いていたわけではなく、ゼンタングルを知る前から描いていた自分の絵が「たまたまゼンタングルに似ている」という事だったので、あまり深くは考えず絵の1つのジャンルだと考えていたのですが、その後日本でゼンタングルブームがやってきて考え方が変わるようになりました。
始めはブームに乗りメリットが多かったゼンタングル

誰が付けたか知らないけど私の絵はゼンタングルのジャンルに入るらしい
そう知ってから、SNSでの投稿時には#ゼンタングルとタグをつけて投稿したり、ブログのタイトルにゼンタングルとつけて記事を書いたりしていました。
おそらく日本で一番初めに「ゼンタングル」とカタカナでタイトルをつけて記事を書いたはずなので、当時はまだゼンタングルに関する日本の記事は無く、徐々に認知され始めたゼンタングルについて検索をすると、ほとんどの人が私のサイトにたどり着いたはずです。
ブームが着た当初は、その「ゼンタングル」というキーワードでの検索流入による恩恵がものすごく、このサイトのアクセスの半分以上をゼンタングルについての記事が独占していました。
はからずも偶然にちょっとだけブームの先取りをしていたおかげでSNSやYouTubeのフォロワーが一気に増えました。
これはいい点だったと思います。
ゼンタングルブームがきて、沢山の人がゼンタングルを始めるようになった
私が言う所のアートの一般化がもたらすデメリットを感じ出したのが、ゼンタングルを始める人が増え、私の作品をコピーしてSNSに投稿するようになったころです。
「いやいや、あなたの絵なんて別に真似するに値しませんけど」とか「自惚れるな」というコメントとかメッセージをいただくことがあるんですが、別に「真似されて嫌だった」という事を言いたいわけではありませんのでご理解くださいね。
当時は書店で買えるゼンタングルの参考書などはありませんでしたから、ネットで検索して「ゼンタングル」で引っかかる画像をまねる人が多かったんだと思います。
未だにGoogleの画像検索で「ゼンタングル」と入力すると上の方に私の絵がいくつも出てきます。
私自身がゼンタングルとタグ付けした絵もあれば、他の人が勝手にタグ付けしたものもあったので半分は私の責任もありますが、まさかこうも無秩序に絵を真似られるとは思っていませんでした。
自分の絵を真似していただけたことは嬉しい反面、見る人にとっては誰が大元のデザインを描いたとか、どれがオリジナルだとかはわからないわけです。そして、皆が楽しめるゼンタングルというアートジャンルに自分が入ったことによって、自分の中では(一応)オリジナリティとか感じて創作していたのが、ありふれた絵になってしまったと感じました。
そして、私自身は絵描きとして少しは仕事を得ることができるようになっていたころだったので、この流れはいかんなーと思い始めます。
ゼンタングルは商標登録されていて、認定ゼンタングル講師が出てき始める
ゼンタングルが商標登録されているという事から、日本ではどうかわかりませんがアメリカでは、ゼンタングルの協会?が定めた認定講師以外ゼンタングルを教えることも、ゼンタングルと名のついた商品を売ることもできません。
自分はもちろん日本に住んでいますし、アメリカにわざわざ行ってゼンタングルの試験を受けるつもりもなかったため、以降ゼンタングルというタグ付けを一切やめ、(元々ゼンタングルを描いていたつもりはありませんが)方向転換をすることを余儀なくされました。
そして、徐々にアメリカで公認された日本人のゼンタングル講師が出始め、日本の書店にもそんな方たちが描いたゼンタングルの書籍が並んでいます。
アートに対するハードルが下がるのは良いことではある

私の経緯はこれくらいにしておきましょう。
客観的に見れば、ゼンタングルを始めるような方は普段からクリエイティブな作業が好きだったり憧れていたり、絵は見る側ではなくて作り手にまわりたい人だと思います。
私は「アートは才能のある一部の人がやるもの」という考え方が嫌いなので、ものづくりや絵を描くのが好きな方が気軽にできて楽しめるゼンタングルのようなものは、アートに対するハードルを下げてくれるので良いと思います。
「アートが好き」というのには、「アートを見るのが好き」なひとと「アートを語る人が好き」というのと「アートを作るのが好き」という人がいて、それぞれ違う種類の人種だと思っています。
そんな中で「誰でも簡単にアートを作る側にまわることができる」という点で、ゼンタングルの功績は凄く大きい、だからこそ世界中で流行っているんだろうなと感じます。
ただし、絵を仕事としていきたい私にとっては、この流れは少し逆風となりました。
誰でもできるアート「ゼンタングル」をアーティストが敢えてやることのデメリット
ゼンタングルをアーティストの生業とすることのデメリットは、ゼンタングルが商標登録されていて、ゼンタングルの名前を使って商品を販売できない事だけではありません。
多くの人がゼンタングルをやることによって、本来ゼンタングルをやるつもりが無い(ゼンタングルに似ていただけの)私の作品は、趣味でゼンタングルを始めた一般の方のカテゴリーにまとめられることになってしまったわけです。
もちろん、アートのジャンルでひとくくりにされること(水彩画、油彩画など)は、良くあることなのでその中で光り輝くものがあれば、ゼンタングルをやりながらもアーティストとして食べていくことは可能かもしれません。
しかし、アメリカのゼンタングル協会が「ゼンタングル講師の資格」のようなものを発行しているので、認定された人以外はゼンタングルの世界で言えば「一般人」と同じことになってしまうわけです。
つまり私は、
- ゼンタングルの世界では資格のない一般人同様
- ゼンタングルをアートの入り口として参入する人が、私の作品を無断でコピーし始めた
- 多くの人が真似するようになったので、私の作品の独自性が薄れてきた
上記のようなデメリットを感じるようになりました。
これはあくまで私が個人的に、ゼンタングルをやり続けるデメリットとして感じたものなので、必ずしもすべてのクリエイターさんがゼンタングルをすべきではないという意味ではありません。
ただ、やはり自分なりの手法や表現方法を常に模索するアーティストとしては、やはり急に自分と似た絵を描く人が大勢出てきて、中には自分の作品を真似てさも自分が考えた構図のようにUPする状況は中々耐え難いものがあると思います。
アートの一般化がもたらすメリットとデメリット

メリット | デメリット |
そのアートカテゴリーの認知度が上がる | 作品の独自性が失われやすい |
SNSでのファンが増えやすい | 誰でもできる分、誰でもできるアートというレベルで評価されてしまう |
流行に乗ってフィーチャーされやすい | コピーする人が増える |
私の場合は、ゼンタングルを例にしましたが、ゼンタングルは特に「特定の団体が資格を発行している」「商標登録されている」「〇〇をしていればゼンタングルという境界が曖昧」等の点が、特にアーティストが扱うジャンルとしてはハードルがあがってしまったように思います。
ゼンタングルは、水彩画や油彩画のように画材によってジャンル分けされているわけではなく、特定のパターンや柄などによってカテゴライズされているようなので、ゼンタングルによくあるモチーフやパターンを使うと、その時点でゼンタングルにカテゴライズされてしまいやすいように思います。
元々、マオリ族の部族模様や、和柄の青海波などを混ぜて描いていた私の絵も見事にそれにハマり、独自性が失われてしまったような格好になってしまったわけですね。
多くの人が楽しめるゼンタングルは、アートへの参入障壁が取っ払われ、誰でも楽しくアートができる反面、似た様なスタイルで絵を描いていた私のような人間にとっては、デメリットが大きかったと思います。
まとめ
アートが才能のある限られた人だけができるようなものであって欲しくないと思いつつも、いざ一般化して多くの人が自分と似たジャンルを始め出した時に困ってしまったという体験談でした。
絵を仕事にする以上、自分の創作物に価値を生み出さなくてはいけません。
しかし、ブームやアートを取り巻く環境によって、自分の創作物の価値が激変することもあり得ます。そう言った場合でも、自分の作品にいかに価値を持たせて行くかというのが、長く絵で生計を立てるためにも必要な視点だと感じます。
自分自身の作品の価値とともに、あなたの作品に対する考え方や人となりを自らのメディアで継続して発信することが、安定した創作活動につながるはずですので、何が起きても大丈夫なように準備をしておきましょう。
私の作品や制作過程などの情報は「Instagram」で公開しています。
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一緒に水彩画を沢山描いて楽しみながら上達しましょう!
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