正直、自分は普段あまり本は読みません。
本を読む時間があれば創作活動にいそしみたいからです。
ただ、この本はもう三回以上読み返しています。
「アーティストのためのハンドブック ~制作につきまとう不安との付き合い方~」
デイヴィッド・ベイルズ / テッド・オーランド 著
野崎武雄 訳
この本は、今現在創作活動にはげんでいる人、アーティスト・芸術家志望の人に向けて書かれた本です。
アーティストにおすすめの理由
まず読んでいて驚いたのが、書かれている内容、特に創作活動に関わるうえで必ずでてくる「クリエイターやアーティスト特有の悩み」として挙げられているものが自分にも当てはまり、自分が抱えている悩みや不安は、他のアーティストの人たちも同じく抱えていて、共有/共感しあえるものだったんだ、という事に気付かせてもらえたことです。
例えば、
「自分に才能はあるのか」
「このまま売れなかったらどうしよう」
「今自分がやっていることに意味はあるのか」
「自分よりも優れている人が沢山いる」
「今からでは始めるのは遅いのではないか/もうすでに先にやっている人がいる」
「自分はアーティストのふりをしているだけかもしれない」
「誰も理解してくれない」
などです。。
いずれも、自分自身にも身に覚えのある悩みや不安です。
結局は、悩みや不安は自分で乗り越えるもので、それと向き合ってこそ創作活動に面白みや深みが出てくるのではないかと思いますが、中々共感してもらいにくいこれらの悩みについて、他のアーティストも同様に悩んでいるんだという事を知れたのは、とても励みになりました。
この本は、現役のアーティストが書いており、これらの悩みにいかに向き合うかという事について述べられています。 内容はすごくいいのですが、翻訳が直訳した感じなのか文章はかなり読みにくく、すんなり入ってこないせいもあって何度か読み直しました。
いくつか読んでいて、はっとさせられた箇所がありました。
いずれにせよ、あなたは自分の製作物を、ただ進めればよいのです。観客は完成したものに対して、どのように感動したか、刺激を受けたか、または楽しんだか発言する立場にいます。しかし、あなたの製作プロセスについて何も知らないし、関心もありません。観客とはあとからやってくるものです。純粋なコミュニケーションがあるのは、あなたと、そしてあなたの製作物との間だけなのです。
自分は、メッセージ性のある絵やアートが好きで、自分でも描いているモチーフや手法など自分自身のこだわりと意味を込めて製作していますが、それは観客にとっては関係のない事で、自分のその思いは自分の製作物にのみ注がれている方が、健全であるように思わされました。 観客がどのように思うか、どのように見て欲しいか、などは要らぬ不安で、自分が作りだしたいものに集中して、その思いを自分の創作物にぶつければ、その結果どう思ったかは後で観客が知らせてくれます。
また、アーティストと画材の関係性についても、とても興味深い記述がありました。
材料とは、基礎的で粒子のようなものです。帯電しているけれども、無頓着な存在です。材料はあなたの空想については何も聞き入れてはくれませんし、怠惰な望みに反応して立ち上がったり、また動いたりもしません。材料はあなたの手が行ったことに、ただ正確に反応するだけです。書かれた言葉は、ただ紙の上に現れた言葉です。それは書く必要があったという事でもなく、また書くという事について考えられたことでもありません。画家のベン・シャーンの言葉を借りれば、「真っ白いキャンバスの前に立つ画家は、絵具という観点から考えなければならない」のです。
自分の友人で、「画材を変えたら一気に伸びた」という画家がいるのですが、この文章を読んだ時にその友人を思い出しました。
彼は実際に数百万円の値で絵が売れる画家になっているのですが、その友人の画家がそれまでにあまりパッとした絵が描けていなかったのは、彼が使っていた画材が悪く、一気に伸びたのは、高級な良い画材に変えたからではありません。 彼の場合は彼の作りたい世界観に彼の新たに選んだ画材がフィットし、その世界観を正確に表現できるようになったからなのだと思います。
画材自体が魔法を使えるわけではなく、いい画材だからいい絵が描けるわけではありません。
自分も、よく画材の質問を受けるのですが、毎回教えてがっかりされるのではないかと思いながらも「コンビニで売ってる100円のボールペンですよ」と答えます。(もちろんそれ1種類ではないのですが、高級な画材は一切使ってません、、、そんなお金もありません^^;)
引用した文章が言うように、自分が画材を選ぶ基準は、「自分の表現したいものを実現するにはどのペンがいいのか」という所を重要視しています。
例えば、「石膏の壁にウォールドローイングをする時に、水性のマーカーだとこすれて落ちるのではないか? 土台の壁の色が透けて見えるのではないか? 水性のマーカーでもPOSCAなら不透性のインクだから大丈夫!」などのものや、「キャンバス地の紙に描く時に、ドローイングペンだと摩擦に弱くペン先がすぐに摩耗してしまうので、ボールペンを使おう」などといったことです。
この本は、概念的な観点からの話や精神論的な話もままありますが、自分にとっては納得いく内容も多く、買ってよかったと思える本でした。
自分と同じように、物づくりや絵描きさん、それ以外でも自分のやりたいことを絶対やってやる!と頑張っている方には是非読んでもらいたい1冊です。
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